こんにちは、あいです。
伊勢のバスの話をするとき、たいてい出てくるのは三重交通の外宮内宮線です。外宮前から内宮前へ、51系統と55系統。参拝に来る方が使うのは、ほぼこれです。
でも伊勢には、もう一つバスが走っています。おかげバスといいます。市が運行しているコミュニティバスで、市民が病院や買い物に行くための足です。観光案内にはまず出てきません。
今日はこのおかげバスの話をします。ただし最初に、いちばん大事なことを正直に書いておきます。
これは、内宮や外宮に参拝するための足ではありません。
それでも書くのは、伊勢の回り方が一つだけではないからです。神宮は内宮と外宮だけではなくて、125のお社でできている。そちらを見に行こうと思ったとき、この地味なバスが効いてきます。

おかげバスの運賃 ― 大人200円、ICなら180円
まず数字から。伊勢市公式サイト(令和8年6月12日更新)に載っている運賃表です。
| 区分 | 現金 | ICカード | 1日乗車券 |
|---|---|---|---|
| 大人(12歳以上65歳未満) | 200円 | 180円 | 400円 |
| 高齢者(65歳以上) | 100円 | 90円 | 200円 |
| 小児(6〜12歳未満) | 100円 | 90円 | 200円 |
| 幼児(1〜6歳未満) | 100円 | 90円 | 200円 |
| 乳児(1歳未満) | 無料 | 無料 | 無料 |
| 障がい者 | 100円 | 90円 | 200円 |
どこまで乗っても200円です。距離で変わりません。ICカードだと20円引きの180円。
高齢者運賃で乗るときは、運転免許証など年齢が分かるものの提示が必要です。障がい者運賃は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれか、またはミライロIDアプリの画面で適用されます。同伴のお子さんは1人目が無料です。
回数券もあります。100円券11枚綴りで1,000円、50円券11枚綴りで500円。1枚ぶん得になる、昔ながらのかたちですね。
デジタル1日乗車券 ― 400円で、アプリの中に入っています
紙の1日乗車券は車内でしか買えません。これがけっこう不便で、乗ってから「1日券ください」と言うことになります。
そこで2026年に入ってから使えるようになったのが、デジタル1日乗車券です(令和8年6月17日時点の情報)。
- 一般大人(12歳〔中学生〕以上65歳未満):400円
- こども(1歳以上6歳未満〔未就学児〕、6歳以上12歳未満〔小学生〕):200円
- 高齢者(65歳以上):200円
- 障がい者大人:200円 / 障がい者こども:100円 / 高齢障がい者(65歳以上):100円
買い方は、『三重交通グループアプリ』をダウンロードして、アプリの中で購入。支払いはクレジットカードかPayPayです。使うときは、バスを降りるときに「利用を開始する」「使う」を押して、「チケット読み取り」の画面を運転士さんに見せます。
有効範囲は、おかげバスと、おかげバスデマンド(予約制)の全路線が1日乗り放題。ただし沼木バスでは使えません。ここは間違えやすいところです。
大人の運賃は1回200円ですから、3回乗れば元が取れる計算になります。1日で3回。これは意外と、すぐ超えます。
環状線と「乗継割引券」― 言わないともらえません
おかげバスの中で、いちばん性格が違うのが環状線です。
- 1周18.2km、所要90分
- 右回り1日9便、左回り1日9便
- 運行は三重交通
社会実験として平成31年1月4日から令和2年3月31日まで走らせて、利便性が高いと判断されたので、令和2年4月1日から本運行になった路線です(令和8年4月1日には「桜木地蔵前」バス停が新設されました)。市のページには路線図と時刻表のPDFも置いてあります。
そして、この環状線には知られていない仕組みがあります。乗継割引券です。
市の公式ページには、こう書かれています。
「路線バス・おかげバス(デマンド)、地域運営乗合タクシーを降りる際に、乗務員に『環状線との乗継割引券をください』とお伝え下さい。」
割引の中身はこうです。
- 大人(200円) → 乗継割引券(100円)を使うと 100円
- 65歳以上の高齢者や障がい者など、もともと100円で乗れる方 → 乗継割引券を使うと 無料
つまり、半額になります。 ただし、ここがいちばん大事なところなのですが、降りるときに自分から「乗継割引券をください」と言わないともらえません。 黙って降りたら、次の環状線は普通に200円です。
伊勢市駅の外宮側ホームにも設置場所があります。乗り継ぐつもりの日は、降車のときの一言を忘れないでください。
乗り方の作法 ― 後ろから乗って、降りるときに払う
観光で来た方がいちばん戸惑うのが、たぶんここです。
乗車は後ろのドアから。運賃は降りるときに払います。
伊勢市駅前や宇治山田駅前で待っていると、前のドアが開くのを待ってしまいがちなのですが、後ろが乗り口です。
支払いは現金のほか、交通系ICカードが使えます。emica・TOICA・ICOCA、それにモバイルSuicaも対応しています。ただし三重交通グループの車内ではチャージができないので、残高は乗る前に確認しておいてください。これは外宮内宮線と同じ落とし穴です。詳しくは外宮から内宮のバス ― のりば・運賃と、時刻の調べ方のほうにも書きました。
運休は1月1日から3日までだけ。それ以外の日は、土日祝も含めて動いています。
ときどき、ポケモンが走っています
まじめな話が続いたので、ひとつ楽しいことを。
おかげバスには、みえ応援ポケモン「ミジュマル」と、でんきタイプのポケモンがラッピングされた電気バスが走っています(令和8年7月29日時点)。ポケモン株式会社の協力によるもので、伊勢市の低炭素なまちづくりの取り組みの一環です。
- 車両はBYDジャパンの小型電気バス J6、2台
- 乗車定員29名、バッテリー容量105.6kWh、航続距離200km(乗車率65%・エアコン不使用時)
- 使っている電気は中部電力ミライズの**「三重美し国Greenでんき」**(再生可能エネルギー・CO2排出量ゼロ)
走っているのは、辻久留・藤里線/鹿海・朝熊線/二見線/東大淀・明野・小俣線の4路線です。御薗線だけは道路の幅などの事情で運行していません。
2台しかないので、狙って乗るのは難しいです。でも、来たら分かります。静かですし、なにより見た目が違いますから。お子さん連れで伊勢に来られる方は、頭の片隅に入れておいてください。
正直な話 ― 内宮・外宮への足としては使えません
ここからが、この記事でいちばん書きたかったところです。
おかげバスの路線は、御薗線・辻久留藤里線・鹿海朝熊線・二見線・東大淀明野小俣線、それに環状線。名前を見て分かるとおり、市内の生活圏を結ぶ路線です。
そして、公式サイトの作りが路線によってばらばらです。環状線には路線図と時刻表のPDFが用意されていますが、他の5路線については、時刻表のページを開いても Yahoo!路線情報・NAVITIME・駅探といった外部の検索サービスへのリンクと二次元コードが並んでいるだけで、経由地の一覧が見当たりません。
つまり、「この路線で内宮に行けますか」という問いに、市の公式ページだけでは答えが出せない路線があるのです。あたしは在住者ですが、それでも「たぶん行けない」以上のことは、確かめずに書きたくありません。
だから、こう書きます。
内宮・外宮への参拝は、三重交通の外宮内宮線(51・55系統)を使ってください。 これが伊勢の観光導線の本線です。おかげバスは、その本線から外れたところを走っている別のネットワークだと思ってください。
調べるときは、こんな順番になります。
- Yahoo!路線情報・NAVITIME・駅探で、出発地と目的地を入れて検索する(市の公式ページからリンクされています)
- バスロケーションシステムで、今バスがどこを走っているかを見る
- 分からなければ、伊勢市役所交通政策課(0596-21-5593)か三重交通伊勢営業所(0596-25-7131)に電話する
遠回りに見えますが、これがいちばん確実です。
ただ、実はもう一つ、いちばん確実な方法があります。
紙の冊子には、全部載っています ― 伊勢市公共交通総合時刻表
伊勢市は毎年、**「伊勢市公共交通総合時刻表」**という冊子を出しています。令和8年度版は、広報いせの令和8年5月1日号と同時に配布されました(令和8年4月24日更新の案内より)。
中身がすごいのです。
- おかげバス環状線の路線図と時刻表
- おかげバス各線(御薗線・辻久留藤里線・鹿海朝熊線・二見線・東大淀明野小俣線)
- おかげバスデマンド(小俣・粟野/御薗小木田尻の予約制)
- 沼木バス(定時運行・予約制)
- 三重交通の路線バス、各停留所の時刻表
- 近鉄の時刻表(伊勢市駅・宇治山田駅・五十鈴川駅ほか)
- JRの時刻表(伊勢市内各駅)
- 伊勢市内のタクシー会社一覧
つまり、さっき「Webには見当たらない」と書いたものが、紙の冊子には全部まとまっているのです。バスも電車もタクシーも、一冊で。
ウェブサイトのほうは路線ごとに作りがばらばらなのに、冊子は完成している。これはたぶん、この冊子がもともと市民のために作られたものだからだと思います。市役所や支所、公民館などで手に入ります。伊勢に何日か滞在するなら、着いた日にもらっておくと、以後の移動がまるごと楽になります。
あたしは正直、この冊子の存在をちゃんと認識したのは最近です。Webで探して見つからないと「無い」と思い込んでいました。無かったのは、あたしの探し方のほうでした。

では、誰のための足なのか ― 神宮125社という答え
ここでもう一つ、あまり知られていないものを紹介させてください。
**「神宮125社めぐり帖」**という取り組みがあります。運営は伊勢地域公共交通会議で、事務局は伊勢市の交通政策課。つまり、おかげバスを運行しているのと同じところです。
神宮は、内宮(皇大神宮)と外宮(豊受大神宮)の二つの正宮だけではありません。別宮14所、摂社43社、末社24社、所管社42社。合わせて125社。この125社を12のエリアに分けて、モデルコースにしてあるのがこの「めぐり帖」です。
エリアは、外宮・内宮・五十鈴川・二見・鳥羽磯部・大湊神社・小俣・田丸・宮川・外城田・斎宮・瀧原の12。伊勢市の外にまで広がっています。
そして、この企画が前提にしているのが近鉄・JR・おかげバス・三交バス・シェアサイクルです。「公共交通の正しい乗り方」というガイドまで用意されています。二見エリアはスマホアプリも出ています。
ここでようやく、話がつながります。おかげバスは、観光客を内宮に運ぶための足ではなく、125社を巡る人のための足として設計されているのです。市が同じ課で両方をやっているのは、偶然ではないと思います。
摂社・末社・所管社がどういうものかについては、神宮周辺の摂社・末社・所管社のほうに書いています。
夜の足 ― おかげライドシェアは金曜と土曜だけ
ついでに、もう一つ新しいものを。
伊勢市は**「おかげライドシェア」**という実証事業をやっています(令和8年7月17日時点)。
- 実施期間:令和8年8月1日(土)〜令和9年1月30日(土)
- 運行時間:金曜・土曜の20時〜24時(12月31日のみ22時〜翌3時)
- 配車:タクシーアプリ「GO」のみ。電話予約は不可
- 支払い:クレジットカード・d払い・PayPay・Apple Pay のいずれかを事前登録
運行は伊勢志摩観光コンベンション機構が担当しています。
大事なのは、金曜と土曜の夜しか動いていないということです。日曜の夜も、平日の夜も対象外。「伊勢は夜にタクシーがつかまらない」という問題への部分的な答えであって、全面的な答えではありません。使うつもりなら、GOアプリと支払い方法の登録を日本に着く前に済ませておいてください。夜に困ってからアプリを入れるのでは間に合いません。
おじいちゃんと、バス停の時刻表

おじいちゃんは、車の運転をやめてからおかげバスに乗るようになりました。
一緒に乗ったとき、あたしは正直「不便だな」と思っていました。1時間に1本あるかどうかの路線で、待つ時間のほうが乗っている時間より長い。スマホで調べれば済むのに、おじいちゃんはバス停の紙の時刻表を、指でなぞって確かめていました。
あたしが「アプリのほうが早いよ」と言うと、おじいちゃんはこう返しました。
「次のバスまで20分あるって分かったら、そこの畑を見に行けるやろ。」
そのときは意味が分かりませんでした。今なら少し分かります。バスの時刻表は、待たされる理由ではなくて、20分という時間をもらう仕組みなのだと。車で行けば5分で通り過ぎる道を、20分かけて眺めることになる。125社めぐりというのは、たぶんそういう回り方のことです。
内宮と外宮だけを見て帰るのが悪いとは思いません。あたしもふだんはそうです。でも二度目、三度目に伊勢へ来る方には、この地味なバスのほうを勧めたくなります。
まとめ
- 運賃は均一200円(ICなら180円)。高齢者・小児・障がい者は100円(ICなら90円)
- 1日乗車券は400円。紙は車内販売のみ、**デジタル版は『三重交通グループアプリ』**でクレカかPayPay購入。3回乗れば元が取れます
- デジタル1日乗車券はおかげバスとおかげバスデマンドが乗り放題。沼木バスは対象外
- 後ろ乗り・降りるときに支払い。 全国交通系ICは使えるが車内でチャージ不可
- 環状線に乗り継ぐなら、降りるときに「乗継割引券をください」と言う。 大人200円が100円、100円の方は無料になります。言わないともらえません
- 内宮・外宮へは三重交通の51・55系統が本線。 おかげバスは別のネットワークです
- 経由地と時刻は「伊勢市公共交通総合時刻表」の冊子がいちばん早い(バス・近鉄・JR・タクシーが一冊に)。Webで探すならYahoo!路線情報・NAVITIME・駅探、それでも分からなければ交通政策課(0596-21-5593)へ
- おかげライドシェアは金曜・土曜の20時〜24時のみ。 GOアプリ限定・電話予約不可
なお、大型連休には内宮・外宮の周りで大きな交通規制がかかります。2026年のシルバーウィーク(9月19日〜23日)については5日間で交通規制の中身が変わりますにまとめました。車で来る場合の全体像は車で伊勢神宮へ来る場合の駐車場と渋滞、三重交通の1日券との比較はみちくさきっぷの一日活用法のほうをどうぞ。
それでは、また次の記事で。
出典・参考: 伊勢市公式サイト「おかげバス・おかげバスデマンド」(令和8年6月12日更新)・「デジタル1日乗車券」(令和8年6月17日更新)・「時刻表インターネット検索」(令和8年6月17日更新)・「おかげライドシェア実証事業について」(令和8年7月17日更新)・「おかげバス環状線について」(令和8年4月1日更新)・「伊勢市公共交通総合時刻表」(令和8年4月24日更新)・「みえ応援ポケモン『ミジュマル』電気バス運行情報」(令和8年7月29日更新) / 神宮125社めぐり帖(125megurichou-ise.jp) ― 伊勢地域公共交通会議(事務局: 伊勢市交通政策課) / 三重交通公式サイト ― 運賃・運行内容は改定される場合があります。環状線を除く各路線の経由地は伊勢市公式サイトに一覧の記載がないため、本記事では特定の停留所への到達可否については触れていません。