こんにちは、あいです。
御用材 (ごようざい) の話は、これまで「どこから来るのか」と「曳き入れたあとどうなるのか」の二つを書いてきました。でも、もうひとつ手前の話が抜けていたんです。そもそも、その木は誰がいつ植えたのか。
ちょうど今月、その答えになる行事が予定されています。神宮の公式サイトに、2026年10月28日の 植樹祭 (しょくじゅさい) のお知らせが出ました。将来の遷宮の用材になることを願って、宮域林 (きゅういきりん) にヒノキの苗を植える日です。
第63回の御造営が進んでいるその同じ秋に、ずっと先の遷宮のための苗が植えられる。今日はこの「調達のいちばん最初の一手」を記録しておきます。
※この記事は 2026年10月12日時点 の神宮公式発表をもとに書いています。植樹祭はまだ行われていない予定です。

2026年10月28日の植樹祭 ── 公表されている内容
神宮公式サイトの「祭典・催しカレンダー」(2026年10月) と、令和8年9月21日付のお知らせ「植樹祭」に書かれている内容は、次のとおりです。
- 日時: 2026年10月28日 (水) 午前10時 (予定)
- 場所: 宮域林
- 内容: 将来の遷宮用材となることを願い、大宮司以下の職員が、3年生のヒノキ苗 約400本を植える
- 参列: 一般の方の奉拝・参列はできない
公表されているのはここまでで、宮域林のどのあたりで行われるのかといった細かい点は書かれていません。分からないところは、分からないままにしておきます。
大事なのは最後の一行です。植樹祭は、見に行ける行事ではありません。 お木曳のように沿道から参加できるものとは性格が違うので、「10月28日に伊勢へ行けば見られる」と思って予定を組まないでくださいね。
なお、式年遷宮記念 せんぐう館の公式サイトの解説では、神宮植樹祭は「毎年4月」に行われると紹介されています。今年の公式のお知らせは10月28日。時期がなぜ違うのかは、あたしには確認できていません。日付については、今年のお知らせのほうを基準にしています。
宮域林ってどんな森?
植える場所である宮域林について、せんぐう館の公式解説から整理します。
- 面積は 約5,500ヘクタール。伊勢市の南部に広がっていて、国土交通省 観光庁の多言語解説文では、伊勢市の面積のおよそ4分の1にあたると説明されています
- 大正12年 (1923年) に「神宮森林経営計画」が立てられ、森が二つに区分されました
- 第一宮域林 (約1,100ヘクタール): 内宮の周辺など。風致と五十鈴川の水源を守る森で、原則として生木は伐らない
- 第二宮域林 (約4,400ヘクタール): 水源と風致を守りながら、御造営用材になるヒノキを育てる森
ヒノキの造林地は約2,300ヘクタール。ただしヒノキだけの山にするのではなく、入ってくる広葉樹も一緒に育てて、針葉樹と広葉樹が混ざった森にしていく方針だと説明されています。
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出典: Daderot, Wikimedia Commons / CC0
内宮で手を清める五十鈴川の水は、この森から流れてきます。御用材を育てる山と、参拝のときに目にする川は、同じひとつの森の話なんですね。
3年生の苗が、御用材になるまで
ここからが、数字を見てあたしがいちばん驚いたところです。
せんぐう館の解説によると、御造営用材は直径60センチ前後の木が中心なので、育成の目標も直径60センチ。そのうえで、次のような手順で木が選ばれていきます。
- 植えてから 30年以上 たった林で、幹のまっすぐさ・太さ・根張り・枝ぶりを見て候補の木を選ぶ
- いちばん優良な木は「大樹候補木」。幹に白いペンキを 二重 に巻く
- その次に優良な木は「御造営用材候補木」。白いペンキを 一重 に巻く
- 候補木のまわりの木を間伐して、光を当てて太らせる
- 200年生 の時点で、大樹候補木は直径1メートル以上、御造営用材候補木は直径60センチ以上を目指す
最終的に残すのは、1ヘクタールあたり約100本。平成26年の時点で、大樹候補木は約30,000本、御造営用材候補木は約28,000本が選ばれている、とあります。
つまり、今月植えられる予定の約400本は、ぜんぶが御用材になるわけではありません。30年後にようやく「候補になれるかどうか」が見えはじめて、そこから間伐を重ねて、残った木が200年かけて太っていく。
20年に一度の遷宮で数えると、200年は 10回ぶん です。

いまの遷宮と、宮域林の木
では、今回の第63回の御用材に、宮域林の木はどれくらい使われるのか。
正直に書くと、ここは確認できていません。 第63回の御用材のうち宮域林産がどれだけを占めるのかを示す公式の数字は、10月12日時点であたしには見つけられませんでした。
確認できているのは、次のことです。
- 第63回の御杣山 (みそまやま) は、長野県の木曽谷国有林と岐阜県の裏木曽国有林に決まっている
- せんぐう館の解説では、前回の第62回 (2013年) で、宮域林から御造営用材の 一部 を供給でき、目的の一部を達成した、とされている
- その割合については、国土交通省 観光庁の多言語解説文に「約25パーセント」とある。ただ、ほかの資料には別の数字もあり、あたしは一次資料で確かめきれていないので、ここでは「一部」と書くにとどめます
- 将来的には、すべての御造営用材を宮域林から供給することが目標とされている
1923年に始まった計画は、2023年でちょうど100年。200年の計画の、いま折り返しを過ぎたところです。木曽からの供給については 御用材はいま、どこから来るのか に書いています。
「買う」より前にある仕事
用材の調達というと、どこの山からどう運ぶか、という話になりがちです。でも神宮の場合、調達のいちばん上流には「育てる」があって、それを担っているのは神宮の職員さんです。
中日新聞の2025年1月1日付の記事によると、神宮司庁の営林部では職員約30人が、植樹や間伐、盗伐や火災の警戒にあたっているそうです。伊勢市の4分の1にあたる森を、約30人で。
植樹祭は、その営林のお仕事のなかで、大宮司以下の職員が自分の手で苗を植える日、ということになります。山田工作場でヒノキを挽いている人たちがいて、山ではその何代も先のための苗を植える人たちがいる。同じ秋に、遷宮の入口と出口が両方動いているんですね。挽くほうの話は 曳き入れた御用材は、そのあとどうなるの? にまとめています。
おじいちゃんと、苗の話をした夜
このお知らせを見つけた日、おじいちゃんに話しました。
「今月植える苗が御用材になるのって、200年後なんだって。あたし、計算したら2226年だったよ」
おじいちゃんは湯のみを置いて、少し考えてから言いました。「植える人は、その木が使われるところを見られん。それでも毎年植える。いま山に立っとる木も、そうやって誰かが植えたもんや」
それから、こうも言っていました。「お木曳で曳いた木はな、あれは昔の人からの預かりもんや。今月の苗は、こっちから先の人への預けもんやな」
あたしは最初、「400本って、5,500ヘクタールにしては少なくない?」と思ったんです。でも、毎年それを続けて100年。数ではなくて、途切れないことのほうが大事なんだと、話を聞いていて思い直しました。

まとめ
- 神宮は 2026年10月28日 (水) 午前10時 に植樹祭を行う予定と公表している (10月12日時点)
- 大宮司以下の職員が、宮域林に3年生のヒノキ苗 約400本を植える
- 一般の奉拝・参列はできない
- 宮域林は約5,500ヘクタール。1923年からの計画で、200年生・直径60センチ以上のヒノキを育てている
- 第63回の御用材に占める宮域林産の割合は、あたしは確認できていない
見に行ける行事ではないので、訪問される方にできることは多くありません。ただ、内宮で五十鈴川のほとりに立ったとき、その水が流れてくる山のほうを少し見上げてみてください。そこで、200年先の遷宮の準備がもう始まっています。
在住の方にとっては、毎日見えているあの山並みの話です。あたしも10月28日は、山のほうを向いて過ごそうと思います。当日の様子が公式に発表されたら、この記事に追記しますね。
参考
- 伊勢神宮 公式サイト「祭典・催しカレンダー 2026年10月」(2026年10月12日閲覧)
- 伊勢神宮 公式サイト 最新情報「植樹祭」令和8年9月21日付お知らせ (2026年10月12日閲覧)
- 式年遷宮記念 せんぐう館「特集三 式年遷宮はつづく 第一回 森そして山の営み」(2026年10月12日閲覧)
- 国土交通省 観光庁 地域観光資源の多言語解説文データベース「Ise Jingu’s Sacred Forest」(2026年10月12日閲覧)
- 中日新聞「自給自足息づく伊勢神宮が、200年後の森を育む 『御用材』切り出す宮域林」2025年1月1日
- 式年遷宮記念 せんぐう館 令和7年度企画展図録 (第63回の御杣山について)
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