JR参宮線の風景と季節 ― 多気から鳥羽まで、車窓で巡る伊勢の四季

こんにちは、あいです。

伊勢に来るとなると、関東・関西からは新幹線や近鉄を使う方が多いと思います。でも、伊勢市駅から先、鳥羽の方へ少し足を延ばしたいときや、松阪・多気方面に出かけたいときには、もうひとつの選択肢があります。それが JR東海の参宮線(さんぐうせん) です。

参宮線は紀勢本線の多気駅から伊勢市駅を経て鳥羽駅まで走る、田園と海を結ぶ路線です。普通列車中心のローカル線で、観光列車のような派手さはありません。けれど、四季それぞれに変わっていく車窓は、伊勢に住んでいるあたしにとっても、何度乗っても飽きないものです。

あい:PCで時刻表を調べる

時刻表や運転本数は時期によって変わっていくので、利用の際は JR東海の公式サイト(jr-central.co.jp)で必ず最新の運行情報を確認してください。本記事では「参宮線にはどんな景色があって、季節ごとにどう変わっていくか」を、在住者目線で書きとめておきます。

JR参宮線とは ― 多気駅から鳥羽駅まで

JR東海の参宮線は、多気駅(たきえき)を起点に、田丸・宮川・伊勢市・二見浦などを経由して、鳥羽駅(とばえき)に至る単線のローカル線 です。紀勢本線から東へ枝分かれする形で、伊勢平野と二見の海岸線をなぞるように走っていきます。

ふだんは気動車(ディーゼル車)による普通列車の運転が中心で、観光特急しまかぜや近鉄ビスタEXのような華やかさはありません。地元の通学・通勤、それから外宮・内宮への参拝で伊勢を訪ねる方の足として、静かに動いているローカル線という性格の路線です。

このほか、名古屋方面からは紀勢本線・参宮線直通の 快速「みえ」 が伊勢市駅・鳥羽駅まで走っていて、こちらは参宮線の景色を一気に味わえる便です。座席種別や運転本数は時期で変わるので、出発前に JR東海公式サイトで確認するのが安心です。

JR伊勢市駅駅舎

出典: Kansai explorer at Japanese Wikipedia, Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0

JR伊勢市駅は近鉄の伊勢市駅と同じ建物に同居していて、改札が向かい合うように並んでいます。北口側がにぎやかな外宮参道側、南口側がJR専用の落ち着いた出入口で、参宮線に乗る場合は南北どちらからでも入れます。

車窓の見どころ ― 田園・宮川・二見の海

参宮線の景色は、区間ごとに表情がずいぶん違います。あたしが個人的に好きな区間を、順番に挙げてみます。

多気 〜 田丸 ― 山と田んぼに挟まれた区間

紀勢本線から分かれて参宮線に入ると、しばらくは山あいに田んぼが広がる、いかにも三重らしい田園地帯を走ります。田植え前に水を張った田んぼに空が映る景色がいちばん好きで、車窓のすぐ向こうに山の稜線が来るのが特徴です。観光地という雰囲気ではなく、普段の三重の田園を素直に見られる区間です。

宮川駅前後 ― 宮川の鉄橋

田丸を過ぎて伊勢市駅に近づく途中、列車は宮川を渡ります。宮川は伊勢神宮内宮を流れる五十鈴川とは別の、伊勢市の西側を流れる大きな川です。鉄橋を渡る数秒だけ視界がぱっと開けて、川面と空が広がります。何度乗っても、ここでは反射的にカメラを構えたくなります。

二見浦周辺 ― 海が近づいてくる

伊勢市駅を出て鳥羽方面に向かうと、二見浦駅(ふたみのうらえき)を経て、海の気配が一気に近くなります。二見浦駅は 夫婦岩 で知られる二見興玉神社の最寄り駅で、駅から徒歩で参道に入っていけます。線路の南側に伊勢湾の入り江がのぞくようになり、終点の鳥羽駅に着く頃には、もう海と港の景色になっています。

春夏秋冬 ― 季節ごとの参宮線

あい:板で説明

普通列車のいいところは、四季の移ろいを一年を通して同じ車窓で観察できることだと思います。あたしがこれまで乗ってきた範囲で、季節ごとの印象をまとめておきます。

春(3〜5月)

田んぼに水が張られていく時期。多気から田丸にかけての区間が、いちばん絵になります。沿線の桜は派手な並木ではないものの、駅舎や踏切のそばにふっと一本咲いている、控えめな風景が参宮線らしいです。日中はまだ風が冷たい日もあるので、上着を一枚持って乗るとちょうどいいくらいです。

夏(6〜8月)

田んぼが青々と稲を伸ばし、車窓の緑が濃くなる季節です。二見浦が近づくと海風の気配が強くなって、列車を降りた瞬間に空気が変わるのを感じます。日中は車内も日差しが強いので、窓側の席を選ぶなら帽子や日除けがあると安心です。あたしも一度、何も対策せず昼の便で鳥羽まで行って、おじいちゃんに「日焼けしたな」と笑われたことがあります。

秋(9〜11月)

稲穂が黄金色に染まる時期。あたしはこの季節の田園区間がいちばん好きで、稲刈り前後の数週間は、宮川手前の景色がいつもより少し豪華になります。伊勢の秋といえば神嘗祭(かんなめさい)が大きな節目ですが、参宮線の車窓もちょうどその季節の空気をたっぷり含んでいて、神宮への参拝の前後に乗ると気持ちの切り替えにちょうど良いです。

冬(12〜2月)

田んぼは刈り取りを終え、車窓は枯れ色とともに視界が遠くまで抜けます。空気が澄む冬の朝の便は、二見浦の海の青がいつもより深く見える日があります。沿線は風が強く吹き抜けることもあるので、ホームでの待ち時間も含めて、一枚多く着込んでから乗ってください。

おじいちゃんと乗った早朝の鳥羽行き

あい:座っている

子どものころ、おじいちゃんと一緒に伊勢市駅から鳥羽行きの普通列車に乗ったことがあります。早朝の便で、車内には地元の高校生と、釣り竿を抱えたおじさんが何人かいるだけでした。

二見浦駅を過ぎたあたりで、おじいちゃんが「ほら、海が見えるぞ」と窓の外を指差したのを覚えています。あたしはまだ眠くて、最初の数秒は何が見えているのかよく分からなかったのですが、視界の端で水面が朝日を返しているのに気づいた瞬間、急に目が覚めました。

おじいちゃんは「参宮線は派手じゃないけどな、こうやって普段の景色をのんびり見られるのがいいんだぞ」と言って、それから鳥羽駅まで黙って外を眺めていました。あたしも真似してずっと外を見ていたのですが、たまにうとうとして、おじいちゃんに肩を支えられたりしていました。

それ以来、参宮線に乗るときはなるべく窓側の席を選んで、おじいちゃんが指差した海の景色を探すのが、あたしの小さな習慣になっています。

まとめ ― 急がない人のための路線

参宮線は、伊勢市駅と鳥羽駅、そして松阪・名古屋方面をつなぐ実用的な路線でありながら、四季を素直に映してくれる車窓を持っています。観光列車のような演出はないので、急いでいる方には近鉄特急のほうが向きます。けれど、

  • 二見興玉神社や鳥羽方面までゆっくり移動したい
  • 神宮への参拝のあとに、海の景色を眺めて気持ちを切り替えたい
  • 田園と海を、一本の列車で両方見たい

そんなときには、ぜひ参宮線の普通列車に乗ってみてください。

伊勢市駅周辺の歩き方や、内宮への参拝の流れについては、内宮の参拝順序と作法近鉄で東京・大阪から伊勢への記事もよろしければあわせてどうぞ。

それでは、また次の記事で。


出典・参考: 東海旅客鉄道株式会社(JR東海)公式サイト(jr-central.co.jp) / 神宮司庁公式サイト(isejingu.or.jp)