おかげ横丁の季節催事カレンダー——在住者が感じる一年の巡り方

こんにちは、あいです。

伊勢に住んでいると、季節の変わり目をどこで実感するか、というのが人によって違うのがおもしろいなぁ、と思います。神宮さんの参道の匂いで気づく人もいれば、五十鈴川の流れの色で気づく人もいて。あたしの場合はけっこうな割合で、おかげ横丁の通りを歩いたときの飾りつけの変化で「あ、季節が動いたな」と感じています。

今日は、おかげ横丁の一年をゆるく季節ごとに区切って、「この時期はこういう空気だよ」というのを在住者の視点で書き残しておこうと思います。具体的な日程や催事の内容は年ごとに変わることも多いので、旅行前にはおかげ横丁の公式サイト( https://okageyokocho.com/ )や当日の掲示で最新の案内を確認してくださいね。

あい:立ち姿で挨拶

通年の柱——「朔日参り」と月ごとのリズム

おかげ横丁を語るうえで、まずおさえておきたいのが毎月一日の「朔日参り(ついたちまいり)」です。これは伊勢に古くからある、月の始まりに神宮さんへお参りする習わしで、朝早くから内宮参道が一年でいちばん賑やかになる日でもあります。

赤福さんが月替わりで「朔日餅(ついたちもち)」を出しているので、その並びも含めて、おかげ横丁の一か月は「一日にピークが来て、そこからゆるく次の月へ向かう」というリズムで巡っています。朔日餅の並び方や当日の空気については 赤福の朔日餅、並び方と当日の流れ にまとめました。

一日以外の日でも、月替わりで店先の設えや掲示物が少しずつ変わっていくので、同じ通りを毎月歩いていても飽きないのが、地元に住んでいる小さな楽しみです。

春——三月から五月、飾りが軽くなる時期

三月に入ると、おかげ横丁の店先には雛飾りを出しているところがちらほら出てきます。桃の節句にちなんだ設えで、旧家に伝わる古いお雛様を店の入り口近くに並べる店もあって、通りを歩くだけでも季節感を味わえます。

四月は参道の空気がいちばん軽くなる時期です。神宮さんの森はまだ深い緑ではないのだけれど、五十鈴川沿いの木々が新しい葉を出して、光の入り方が変わります。あたしは四月のおかげ横丁を歩くのがけっこう好きで、冬の間はちょっとかたかった空気がふわっとほどける感じがします。

五月に入ると端午の節句にあわせて、鯉のぼりや兜飾りを出しているお店が出てきます。ゴールデンウィークは伊勢全体が混みますが、おかげ横丁は朝の早い時間帯だと比較的落ち着いていて、雛飾りから鯉のぼりへ切り替わっていく時期の設えを見るには、朝がおすすめです。

あい:春の装い

初夏から夏——六月から八月、風鈴と夕方の顔

六月は雨の季節。おかげ横丁の石畳は雨に濡れると色が深くなって、あたしはこの時期の通りの見え方がけっこう好きです。傘をさして人が少なめの朝に歩くと、いつも見ている通りが少しちがう表情に見えます。

七月に入ると、店先に風鈴を吊るしているお店が増えます。七夕の設えを出す店も出てきて、通り全体がちょっとだけ「夏の音」に切り替わる感じ。おじいちゃんと一緒に歩いた去年の七月、風鈴の音が重なるところに立ち止まって「これ、江戸時代の伊勢参りの人も似た音を聞いていたのかもしれないな」と話していたのを覚えています。

八月の日中はほんとうに暑いので、在住者としては朝の七時から九時くらいと、夕方以降を狙って歩くのが現実的です。おかげ横丁は夕方から夜にかけて灯りが入ると通りの雰囲気が変わるので、夏はむしろ夕方以降のほうが「季節の顔」を感じやすいかもしれません。

あい:暑い日の表情

秋——九月から十一月、神宮の大祭に寄り添う季節

秋のおかげ横丁は、神宮の年中行事とゆるく寄り添う時期です。特に十月十七日の神嘗祭(かんなめさい)は神宮の一年でいちばん重い祭儀のひとつで、その前後は参道が普段より少し人出が増える印象があります。神嘗祭そのものの由来については 神嘗祭はなぜ10月17日なのか で書きました。

十一月は伊勢の空気がぐっと澄んでくる時期で、五十鈴川沿いの紅葉がおかげ横丁を歩く楽しみを増やしてくれます。真っ赤に染まる派手な紅葉というよりは、山吹色や褐色が混ざる落ち着いた色合いで、あたしはこの時期の参道歩きがいちばん好きかもしれません。

秋は台風の時期でもあるので、旅行で来られる方は当日の天気次第で歩き方を調整するのがおすすめです。強い雨風の日は無理せず、伊勢市駅近くの屋根のあるアーケードで時間をつぶすほうが安全な日もあります。

冬——十二月から二月、師走と正月とお節句前夜

十二月は師走の飾りが少しずつ出てくる時期です。年末が近づくと、お正月に向けた松飾りや注連縄を出すお店が増えて、通りの空気が「新しい年を迎える準備」に切り替わっていきます。

一月一日は当然、伊勢全体で年間いちばんの混雑日です。初詣の参拝で内宮周辺は朝から夜まで人がずっと動き続けるので、おかげ横丁を落ち着いて歩きたい在住者としては、三が日を避けて松の内明けあたりに歩くのが好きです。初詣の混雑回避の考え方は 伊勢の初詣、在住者の混雑回避ノート にまとめてあります。

二月に入ると節分と、二月十七日の祈年祭(きねんさい)が続きます。おかげ横丁は節分の頃に、豆まきや福豆の販売にあわせた小さな設えを出す店もあって、静かな冬の通りに少しだけ賑わいが戻ります。

おじいちゃんと歩いた「季節の切り替わり」

あい:座っておじいちゃんと会話

おじいちゃんは「催事のカレンダーを覚えようとしないで、通りを歩いたときに『なにか変わったな』と思えることのほうが大事だ」とよく言います。あたしはついつい、いつのイベントが何月何日、と暦の上で覚えようとしてしまうので、おじいちゃんのその言葉は毎回ちょっと耳に痛いです。

去年の秋、神嘗祭のあとの十月下旬におじいちゃんと歩いていたとき、通りの店先の飾りがすでに冬支度に切り替わっている店が一軒あって、おじいちゃんが「ほら、こういうのに気づけるように歩くんだよ」と言ってくれました。派手な催事の日でなくても、日々の通りには小さな季節の切り替えが埋め込まれていて、それを拾えるようになると伊勢の一年はぐっと厚みを増すのだ、と教わった気がします。

おかげ横丁の通りの風景

出典: Brakeet, Wikimedia Commons / CC0

まとめ——旅行前に押さえておきたいこと

一年を通しておかげ横丁を歩くなら、ざっくりこんな軸を頭に置いておくと季節の顔がつかみやすいです。

  • 毎月一日: 朔日参りと朔日餅。朝が本番、日中は少し落ち着く
  • 三月〜五月: 雛飾りから鯉のぼりへ。朝の光が軽くなる季節
  • 六月〜八月: 風鈴と夕方の灯り。日中は避け、朝夕を狙う
  • 九月〜十一月: 神嘗祭に寄り添う秋。紅葉は控えめだけど落ち着いた色
  • 十二月〜二月: 松飾りから節分へ。三が日を避けて松の内明けが歩きやすい

具体的な催事の日程や内容は年ごとに変わりますので、旅行の計画を立てるときはおかげ横丁の公式サイトと神宮司庁公式サイト( https://www.isejingu.or.jp/ )を、その年の直前に確かめるのがいちばん確実です。おかげ横丁の一年は華やかな一日のイベントで区切られているというよりは、月替わり・季節替わりのゆるい積み重ねでできている、というのが在住者としての体感です。

このブログは第六十三回神宮式年遷宮の八年間を記録していく予定なので、季節催事もこれから毎年少しずつ書き足していきます。今年の一年の巡り方を、まずはここに残しておきますね。

あい:お辞儀

それではまた、別の記事でお会いしましょう。