節分と祈年祭——二月の伊勢で重なる、地元の風景としての二つの行事

こんにちは、あいです。

ちょっと季節は外れているんですけど、今日はこの春に書きそびれてしまった二月のお話です。伊勢の二月って、節分と祈年祭(きねんさい)っていう、性質のぜんぜん違う二つの行事が二週間ほどの間に重なるんです。一方は家々の豆まきで、もう一方は神宮さんで営まれる古い大祭。日常のなかに粒の違う祈りが二つ並ぶ、ちょっと不思議な季節だなあ、といつも思います。

おじいちゃんが「節分が終わると、神宮さんの二月は本番なんだよ」とよく言うので、その意味を改めて書き残しておきたくなりました。

あい:冬の装い

節分——立春の前の日、家のなかの行事

節分は本来「季節を分ける」日という意味で、立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前日を指す言葉でした。でも今は二月三日(年によっては二日や四日のことも)の立春前日だけを「節分」と呼ぶことがほとんどです。

伊勢の住宅街でも、ふつうに「鬼は外、福は内」をする家はあります。ただ、東京や大阪のニュースで見るような派手な恵方巻きキャンペーンの肌感とは違って、地元のスーパーや和菓子屋さんで小さく告知が出る、くらいの落ち着き方。あたしが朝に近所を散歩すると、前日の夜にまかれた炒り豆がちらっと玄関先に残っていたりして、「あ、ここのおうちもやったんだ」と気づくくらいの距離感です。

派手な節分行事も寺社によってはありますが、伊勢の中心街全体としては「街を挙げて」というよりは「各家庭で静かに」という規模感がふつう、というのが在住者としての肌感覚です。

祈年祭——二月十七日、神宮の年中行事のなかでの位置

節分から二週間ほどあとの二月十七日、神宮では祈年祭(きねんさい / としごいのまつり)が営まれます。

神宮司庁公式サイトの祭事案内によると、祈年祭はその年の五穀豊穣をあらかじめ祈る祭儀で、十月の神嘗祭(かんなめさい)が「その年の新穀を捧げて感謝する」祭りであるのに対して、祈年祭は年の出発点に「お願いをする」祭儀という位置づけです。両者は性格として対になっている、と理解しておくと頭に入りやすいです。

あい:本を持って解説

なお、神嘗祭と月次祭(六月・十二月)を合わせた「三節祭(さんせつさい)」については 神嘗祭はなぜ10月17日なのか で書きました。祈年祭は三節祭そのものには含まれませんが、神宮の一年のなかで重い祭儀のひとつとして位置づけられている、と神宮司庁公式の年中行事の解説からは読み取れます。

参照: 神宮司庁公式サイト「祭典・行事」 https://www.isejingu.or.jp/

一般参拝者の立ち位置

祈年祭は神宮の祭儀ですから、神職の方が古式に従って執り行うもので、一般の参拝者が祭儀そのものを近くで観覧できるわけではありません。月次祭と同じく、外から拝見できる範囲が決まっている、と理解しておくと当日に迷いません(月次祭の参拝の感覚は 月次祭——年に二回、参加のかたち にまとめてあります)。それでも当日は普段より参拝者がやや多めで、参道の歩く速度がほんの少しゆっくりになる、というのが在住者として歩いていて感じる変化です。

具体的な祭儀のスケジュール詳細は年ごとに神宮司庁から案内が出るので、訪問を予定する場合はその年の公式の案内を確かめるのが確実です。

二月の街・参道の風景

節分が「家のなかの行事」だとすれば、祈年祭は「街の外側、神宮さんの森のなかの行事」。同じ二月のうちに、その両方が並んで存在するのが伊勢の面白いところだなあ、とあたしは思います。

具体的には、こんな二週間の流れになります。

  • 二月の頭: 和菓子屋さんで節分の福豆が小さく並ぶ。商店街にちらっと鬼の面が見える日もある
  • 二月三日前後: 立春の前日。家々で豆まきがあり、夜は早めに片付くしずかな住宅街
  • 二月四日以降: 立春。日中の空気が少しだけ春に向かう
  • 二月十七日: 祈年祭。神宮さんの森が、いつもよりちょっと厳かに感じられる
  • 二月後半: 参道沿いの梅がほころびはじめる店もある

地元のひとには当たり前の流れですけど、よそから来た方には「節分のあと、伊勢ではなにかあるの?」とたまに聞かれます。そういうときに「祈年祭が十七日にあって、神宮さんではそっちのほうが二月の本番なんですよ」と答えると、ちょっと驚かれます。

おじいちゃんと歩いた二月の参道

あい:座っておじいちゃんとお話

「節分のあと、神宮さんの二月は本番だ」とよく言うおじいちゃんに、今年の二月のあいだに改めて聞いてみました。

「祈年祭って、神嘗祭ほどは知られていないよね?」とあたしが言ったら、おじいちゃんは「収穫の御礼のほうが目に見えてわかりやすいからな。種をまく前に頼むほうの祈りは、地味でな」と笑って。「でも、おじいちゃんは祈年祭のほうが好きだよ。まだなにも実っていないうちに『今年もよろしくお願いします』ってお願いする、その姿勢のほうが、人らしいと思うから」と。

そのあとあたしも、参道を歩きながら「今年もよろしくお願いします」と心のなかで言ってみました。神嘗祭のときみたいな華やかさはないけれど、これはこれで、二月の伊勢らしい祈り方なのかもしれません。

帰り道、おじいちゃんが「節分の豆を踏まないように帰ろう」と冗談みたいに言ったので、夜道を一緒にゆっくり歩いて家に帰りました。二月の伊勢らしい、なんとも平和な夜でした。

まとめ——二月の伊勢を歩くなら

二月の伊勢を歩くなら、覚えておきたいのはこの二つの感触のちがいです。

  • 節分: 家のなかの行事。街全体としては静かで、商店街にうっすら気配が漂う程度
  • 祈年祭: 二月十七日。神宮の年中行事のひとつ。参拝はできるけれど、祭儀そのものは神職による古式の祭り

もし旅行で訪れる場合は、祈年祭の当日の参拝で「派手なお祭り感」を期待すると拍子抜けすると思います。むしろ、いつもの神宮さんの空気がほんのちょっとだけ濃くなる、その変化を味わう日、と思っておくのがちょうどよいです。

このブログでは、第六十三回神宮式年遷宮を八年かけて記録していくつもりです。祈年祭も、毎年欠かさず巡ってくる行事として、これから何度も書くことになると思います。今年の二月の風景を、まずはここに残しておきますね。

あい:お辞儀

それではまた、別の記事でお会いしましょう。