こんにちは、あいです。
10 月も半ばになりました。伊勢は明日 15 日から 17 日にかけて神嘗祭(かんなめさい)で、町全体がすこし改まった空気になっています。朝晩は上着がほしいくらいで、和菓子屋さんの店先も、いつのまにか栗の色に変わっていました。

6 月に 初夏の和菓子の話 を書いたので、今日はその秋編です。ただ、同じように「この季節はこれ」と並べるだけだと面白くないので、今回は 「持って帰れるかどうか」 を軸にしてみます。大阪や名古屋、東京から来る人にとって、秋の和菓子でいちばん困るのは「おいしそうだけど、家まで持つのかな」というところだと思うからです。
なお、この記事は 2026 年 10 月 14 日時点で書いています。
10月の「朔日餅」を逃しても、栗の季節は続いています
伊勢で秋の栗菓子というと、まず名前が挙がるのは赤福の朔日餅(ついたちもち)の 10 月「栗餅」だと思います。ただ、これは名前のとおり毎月 1 日だけのもので、今年の 10 月 1 日はもう過ぎてしまいました。一年ぶんの内容は 朔日餅の年間ラインアップ一覧 にまとめてあります。
でも、栗の和菓子そのものは 1 日だけのものではありません。おじいちゃんが言うには、「栗の菓子は 9 月の終わりに出はじめて、11 月のなかばくらいまでが盛り。10 月のまんなかは、いちばん種類がそろう頃だな」とのこと。年や店によって前後しますが、あたしが歩いている感覚でも、いまがちょうど選びやすい時期です。
栗の和菓子3種、なにが違うの?
実はあたし、去年まで「栗きんとん」と、おせちに入っている「栗きんとん」を同じものだと思っていました。お店で「あの黄色いねっとりしたのですよね」と言って、おじいちゃんに横から訂正されたのは、ちょっと恥ずかしい思い出です。

そんなわけで、自分の整理もかねて、よく見かける 3 種類を並べてみます。
栗きんとん ― 栗そのものを食べる菓子
蒸した栗の実を裏ごしして、砂糖を加えて炊き、布巾で絞って栗の形に戻したものです。材料はほぼ栗と砂糖だけ。岐阜の東濃地方の名物として知られていますが、秋になると伊勢でも扱う店を見かけます。おせちの栗きんとんは、さつまいもの餡に栗の甘露煮を合わせたもので、別の食べものです。
栗蒸し羊羹 ― 切り分けて、みんなで食べる菓子
小豆の餡に小麦粉や葛粉を混ぜ、栗を入れて蒸し固めたものです。寒天で固める練り羊羹よりも水分が多く、もっちりしています。一本(一棹)単位で売られていることが多いので、家族や職場で分けたいときに向いています。
栗餅・栗大福 ― その日のうちに食べる菓子
餅やもち米の生地に、栗や栗の餡を合わせたものです。朔日餅の栗餅もこの仲間ですね。餅は時間がたつと固くなるので、作った日のやわらかさを楽しむ菓子だと思ったほうがよさそうです。
「日持ち」と「帰り道の時間」で選んでみる

ここからが今日の本題です。あくまで一般的な傾向として、3 種類を持ち帰りやすさの順に並べるとこうなります。
| 種類 | 日持ちの傾向 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 栗餅・栗大福 | 当日中のものが多い | 参拝の帰りにその場で、または宿で |
| 栗きんとん | 数日のものが多い | 翌日以降に家でゆっくり |
| 栗蒸し羊羹 | 数日。真空包装のものはもう少し長い場合も | 切り分けて配るおみやげ |
大事なのは、この表より、お店の表示のほうが正しいということです。 同じ名前の菓子でも、砂糖の量や包装のしかたで日持ちは変わります。買うときに「いつまで食べられますか」「常温で持ち歩いて大丈夫ですか」と聞くのが、いちばん確実です。
おじいちゃんに教えてもらって、なるほどと思ったのは「菓子を買うのは、帰る直前にしなさい」ということでした。朝に買って一日じゅう持ち歩くと、10 月でも日中のかばんの中はけっこう暖かくなります。それに、餅の菓子は歩いているうちに形がくずれてしまいます。
なので、あたしのおすすめの順番はこうです。
- 参拝のあと、その場で食べるもの:栗餅や栗大福をひとつ
- 帰りの電車に乗る前に買うもの:栗きんとんや栗蒸し羊羹
日帰りなら、餅の菓子は「持って帰る」より「伊勢で食べていく」ものと割り切ったほうが、がっかりしないと思います。
おじいちゃんと歩いた、神嘗祭の前の午後
先週、おじいちゃんの買いものについて歩きました。おじいちゃんは毎年この時期、栗蒸し羊羹を一本買います。「新米が出て、栗が出て、神嘗祭が来る。この順番がそろうと、ようやく秋になった気がする」のだそうです。
神嘗祭は、その年の新穀を天照大御神に奉る神宮のお祭りです(神宮司庁公式サイトの祭典案内より)。栗の菓子が神嘗祭のお供えに由来する、という話ではありません。ただ、お米も栗も「今年とれたもの」をいただく季節が重なっている、ということは言えそうです。お祭りの日の過ごし方は 神嘗祭の日に内宮へ に書いています。
帰り道、あたしは栗大福をひとつ、歩きながら食べるつもりで買ったのですが、おじいちゃんに「座って食べなさい」と言われて、川沿いのベンチでいただきました。粉が服につくので、これは言うとおりにして正解でした。
栗のあとに来るもの ― 11月9日の「亥の子餅」
栗の季節が終わりに近づくと、次に出てくるのが亥の子餅(いのこもち)です。旧暦 10 月の最初の亥の日に食べて、無病息災を願うという習わしにちなんだ餅菓子で、『源氏物語』にも名前が出てくると言われています。茶道では、この頃に炉を開く「炉開き」の菓子としても知られています。
2026 年の亥の子は 11 月 9 日(月) にあたります。うり坊(いのししの子)に見立てた、ころんとした形のものが多く、店によって胡麻や小豆、栗などを生地に混ぜています。扱いのない店もあり、並ぶ期間も短いので、見かけたらその場で決めるくらいがよさそうです。
まとめ ― 餅は伊勢で、栗きんとんと羊羹は家で
- 10 月半ばは、栗の和菓子の種類がいちばんそろう時期
- 栗餅・栗大福は当日のうちに。日帰りなら伊勢で食べていくのが安心
- 栗きんとん・栗蒸し羊羹は持ち帰り向き。ただし日持ちは必ずお店で確認
- 買うのは帰る直前に。朝に買って一日持ち歩かない
- 栗のあとは、11 月 9 日の亥の子餅
これから伊勢に来る人は、参拝の帰りにひとつ食べて、もうひとつは家で開ける、という二段がまえにすると、秋の伊勢をすこし長く味わえると思います。あたしは、おじいちゃんの羊羹を一切れ多くもらえないか、今夜も様子をうかがうつもりです。
出典・参照: 赤福公式サイト(朔日餅・10 月「栗餅」の案内)、神宮司庁公式サイト(神嘗祭の祭典案内)。和菓子の由来には複数の説があり、本文では一般的に語られているものをもとに書きました。日持ち・販売期間・取り扱いの有無は年や店舗によって異なります。本記事は 2026 年 10 月 14 日時点の情報です。訪問前に各店の最新の案内を確認してください。