松阪は牛だけじゃない ― 地元が通う鶏焼肉と、隠れた肉料理屋の探し方

こんにちは、あいです。

「松阪」と聞くと、たぶんほとんどの人が 霜降りの牛肉 を思い浮かべると思います。あたしも最初はそうでした。でも、伊勢に住んでいて松阪へ何度も通ううちに気づいたことがあります。地元の人が「今夜、肉行く?」と言うとき、その「肉」は必ずしも牛じゃない んです。

味噌だれをまとった鶏焼肉、煙のむこうのホルモン、路地の奥の小さな焼肉店。今日は、観光ガイドの一面には出てきにくい 松阪の「日常の肉文化」 と、そういう隠れた肉料理屋をどうやって見つけるか、在住者目線で整理してみますね。

あい:立ち姿で挨拶

「松阪の肉」は一枚岩じゃない

まず前提の整理から。松阪が 牛肉の町 として全国に知られているのは事実で、市内には明治から続くと言われるすき焼きの老舗文化があります。お祝いごとや特別な日に、座敷ですき焼きをいただく ― これは松阪の「ハレの日の肉」です。

でも、それとは別の層として、地元の人が普段づかいで通う肉料理屋 の文化が、この町にはしっかり根づいています。

  • 鶏焼肉:味噌ベースのたれに漬けた鶏を網で焼く、松阪周辺の日常食
  • ホルモン・焼肉:気取らない構えの店が路地や住宅街に点在
  • 精肉店の揚げ物:コロッケやミンチカツを店頭で買って食べ歩き

おじいちゃんいわく、「ハレの牛、ケの鶏、って覚えとくといいよ」。特別な日は牛、ふだんは鶏。この二層構造がわかると、松阪の食の風景がぐっと立体的に見えてきます。

地元の日常は「鶏焼肉」― 味噌だれと二種類の鶏

松阪の日常の肉文化を代表するのが 鶏焼肉 です。近年は「松阪鶏焼き肉」という呼び名でご当地グルメとして発信されるようになってきましたが、もともとは昔からこの地域の家庭や大衆店で親しまれてきた食べ方で、養鶏が盛んだった地域性から広まったと言われています。

スタイルはシンプルです。

  • 味噌ベースの甘辛いたれ に漬け込んだ鶏肉を、網の上で焼く
  • 鶏は大きく二種類。柔らかい 若どり と、噛むほどに味が出る 親どり(ひねどり)
  • 焼けたら、お店ごとの つけだれ をちょっと足していただく

初めてのお店で迷ったら、若どりと親どりを一皿ずつ 頼んでみるのがおすすめです。親どりは正直かなり歯ごたえがあるんですが、噛んでいるうちに味噌の香ばしさと鶏の旨みがじわじわ来て、これがくせになります。実はあたし、最初「親どりって焼きすぎて硬くなったのかな?」と勘違いしていて、おじいちゃんに「それが親どりの持ち味だよ」と笑われました。

あい:てへ、ちょっと恥ずかしい

味噌だれは焦げやすいので、網の端でじっくり、こまめにひっくり返す のがコツ。煙はけっこう出ます。服に匂いがつくのも含めて鶏焼肉、だと思ってください。

ホルモンと焼肉の町でもある

もうひとつ、松阪で見逃せないのが ホルモン・焼肉の店の多さ です。地元では「松阪は人口のわりに焼肉店が多い町」とよく言われていて、実際に歩いてみると、駅前の大通りよりも 一本裏の路地や住宅街の角 に、カウンター数席の小さなお店がぽつぽつと見つかります。

こういうお店は、観光向けの看板をほとんど出していません。夕方になると換気扇から煙と味噌の匂いが流れてきて、それが一番の看板代わり。「匂いで見つける」 のが、たぶん一番正確な探し方です。

隠れた店の見つけ方 ― 路地・暖簾・換気扇

じゃあ具体的にどう探すか。おじいちゃんと松阪の町を歩きながら教わった「サイン」を整理してみます。

あい:指差しで解説

  1. 駅前より、一本裏へ。松阪駅の周辺から城下町方面へ歩くと、商人町の名残の細い路地が続きます。日常づかいの店はこういう路地側にあります
  2. 夕方の換気扇をチェック。16時〜17時ごろ、仕込みの煙と味噌の匂いが出はじめます
  3. 暖簾と自転車。色あせた暖簾に、店先に停まった近所の人の自転車。地元客が支えている店のサインです
  4. 手書きの品書き。若どり・親どり・ホルモンが手書きで並んでいたら、まさに日常の肉料理屋
  5. 満席なら出直す。小さいお店ばかりなので、無理に詰めず、時間をずらすのが地元流

松阪の城下町エリアの歩き方そのものは、以前 松阪の城下町を歩く という記事で詳しくまとめたので、昼は城下町散歩、夕方から肉、という組み合わせがおすすめです。

松坂城跡の裏門跡。この石垣の南側から城下の路地歩きが始まります

出典: Saigen Jiro, Wikimedia Commons / CC0

ひとつだけお願いです。こういうお店は ご近所の生活と一体 になっています。写真を撮るときはお店の方にひとこと確認する、大人数で押しかけない、路地では静かに ― 御城番屋敷の歩き方と同じで、「行かせてもらう」気持ちで訪ねてほしいなと思います。

夏の夕方、おじいちゃんと鶏焼肉

7月の終わり、夕方でもまだ33度あった日に、おじいちゃんと松阪まで鶏焼肉を食べに行きました。

あい:暑さでへばり気味

正直、「この暑さで炭火の前はきついよ〜」と思っていたんですが、汗をかきながら親どりを噛んで、冷たいお茶を飲んで、また網に若どりを並べて……を繰り返しているうちに、不思議と体が軽くなってくるんです。おじいちゃんは「夏バテの薬みたいなもんだよ。昔から暑い時期ほど、みんな味噌と肉で乗り切ってきたんだ」と言って、あたしの倍のペースで親どりをおかわりしていました。元気すぎます。

帰り道、服にしっかり味噌と煙の匂いをまとわせながら、「また食べ過ぎたな」っておじいちゃんに笑われました。でもこの匂いごと、松阪の夏の思い出です。

まとめ ― 訪ねるなら

  • アクセス:伊勢市駅から松阪駅まで、JR・近鉄でどちらも20分前後
  • 時間帯:日常づかいの店は夕方から。小さい店が多いので、開店直後の早い時間が狙い目です
  • 注文:迷ったら若どり+親どりを一皿ずつ。ホルモンがあれば追加で
  • 心構え:煙と匂いは勲章。汚れてもいい服で

牛肉の町・松阪の、もうひとつの顔。特別な日のすき焼きもいつか書きたいけれど、まずはこの 味噌だれの煙が上がる日常の風景 から知ってもらえたら嬉しいです。次に伊勢参りで近くまで来ることがあったら、夕方の松阪の路地を、鼻をきかせて歩いてみてくださいね。