こんにちは、あいです。
伊勢市中村町にひっそり佇む「月読宮(つきよみのみや)」は、内宮の別宮のひとつ。内宮や外宮ほど人で賑わうことはなく、四宮が静かに横並びに鎮まる、街なかの小さな森のような場所です。
おじいちゃんに連れられて最初に訪れたのは、まだ小学生のころの初夏の夕方だったかな。「月読宮はね、季節を変えて何度も歩くといいよ」と言われたのを、今でもよく覚えています。

今日は、月読宮を訪ねるときの季節ごとの歩き方と、四宮を巡る参拝のかたちを、在住者目線でまとめてみました。
月読宮ってどんなお宮?
神宮司庁公式サイト(isejingu.or.jp)によると、月読宮は皇大神宮(内宮)の別宮で、御祭神は「月読尊(つきよみのみこと)」。天照大御神(あまてらすおおみかみ)の弟神にあたるとされる、お月さまの神さまです。
ここでちょっとおもしろいのが、月読宮の境内には四つのお宮が横並びに鎮座していること。
- 月読宮(つきよみのみや) ― 月読尊
- 月読荒御魂宮(つきよみあらみたまのみや) ― 月読尊荒御魂
- 伊佐奈岐宮(いざなぎのみや) ― 伊弉諾尊
- 伊佐奈弥宮(いざなみのみや) ― 伊弉冉尊
いずれも皇大神宮の別宮で、ほぼ同じ造りの社殿が並ぶ景色は、神宮の別宮の中でもちょっと珍しい光景です。
四宮を巡る参拝順序
神宮司庁公式サイトの案内によると、月読宮での参拝順は次のとおりとされています。
- 月読宮
- 月読荒御魂宮
- 伊佐奈岐宮
- 伊佐奈弥宮
四宮が横一列に並んでいるので、社殿の物理的な位置と参拝順は直感的には一致しません。あたしも初めて行ったとき、どこから手を合わせればいいか迷っちゃって、おじいちゃんに「順序が分からなかったら、現地の立て札に従えばいいんだよ」と教えてもらいました。
境内入り口付近に参拝順を案内する札があるので、それを確かめてから順に巡るのが安心です。
「順番にこだわりすぎなくていい。ただ、四宮それぞれに丁寧に手を合わせる気持ちのほうが、神さまには伝わるよ」というおじいちゃんの言葉が、なんだか今でも残っています。
春の月読宮 ― 新緑と静けさ
3月終わりから5月にかけての月読宮は、境内の木々が一斉に若葉に変わって、参道の足元まで光がやわらかく落ちる季節。
特に4月の朝、まだ参拝者が少ない時間帯に行くと、社殿の白木と新緑のコントラストがとてもきれい。風が抜けると葉ずれの音だけが残って、ここが伊勢の街なかにあることをふっと忘れそうになります。
春先はまだ朝晩冷えるので、薄手の上着があると安心。境内の参道は玉砂利が敷かれた部分もあるので、歩きやすい靴をおすすめします。
夏の月読宮 ― 木陰の涼しさ
夏は、伊勢の街なかが暑くても、月読宮の境内に一歩入ると、空気が一段ひんやりする感じがします。境内の樹木が陰をつくってくれるからで、午後の早い時間でも、参道に立つと汗が引いていくのが分かるくらい。
ただ、夏は蚊が多いです。あたしは去年、油断して半袖のまま行って、腕を5箇所くらい刺されました…。

「だから先に虫除け塗っていきなさいって言ったろ」っておじいちゃんに笑われちゃったエピソードです。夏に行くなら、虫除けスプレーは必携です。
秋の月読宮 ― 紅葉と神嘗祭の頃
10月中旬から11月にかけての月読宮は、境内の木々が少しずつ色づいて、空気がきりっと締まってくる季節。
ちょうど10月17日の神嘗祭(かんなめさい)の前後は、内宮・外宮を中心にさまざまな神事が執り行われる時期。神宮司庁公式の祭典暦を見ると、別宮にも関連する祭儀の記載があります。混雑する内宮を避けて、神嘗祭の余韻だけを静かに感じたい、という人には、この時期の月読宮はちょうどよい場所だと思います。
紅葉のピークは年によってずれますが、境内のもみじが色づくのは、伊勢の街なかでは11月中旬以降が目安。寒い朝の方が色が冴える、というのもおじいちゃんからの受け売りです。
冬の月読宮 ― 凛とした空気
12月から2月の月読宮は、人がぐっと減って、境内が一年でいちばん静かになる季節。
冷たい朝の参道は、霜が降りていることもあって、白い息と境内の杉の濃い緑のコントラストが、ぴしっとした参拝の気持ちにさせてくれます。あたしは冬の月読宮がいちばん好きかもしれません。
ただ、寒いです。本当に寒いです。手袋・マフラー・厚手の靴下、フル装備で行くのが正解。お賽銭を入れるとき、手がかじかんで小銭がうまく出せなかった年があって、それ以来、財布から先に出してポケットに入れておく癖がつきました。
内宮からの徒歩アクセス
月読宮は、内宮(宇治橋)からだと徒歩でおよそ20〜25分。御幸道路を東へ進むと、月読宮の鳥居が見えてきます。
公共交通機関なら、近鉄五十鈴川駅から徒歩約10分。バスを使う場合は、三重交通の路線で「中村」バス停下車すぐです(時刻は三重交通公式サイトで事前に確認してください)。
おじいちゃんによると、昔は内宮を参拝したあと、徒歩で月読宮を経由して倭姫宮(やまとひめのみや)まで歩く「別宮めぐり」をする人が珍しくなかったそう。今でも、別宮を順に歩く参拝者は時々見かけます。
内宮の参拝順序や基本の作法については、別記事の内宮(皇大神宮)の参拝順序と作法にまとめているので、合わせて読んでもらえると嬉しいです。
おじいちゃんと歩いた、ある夏の昼下がり
去年の8月のお昼すぎ、おじいちゃんと月読宮を歩いたときのこと。
その日は伊勢市内で33度くらいまで上がっていたんだけど、月読宮の境内に入った瞬間、温度計の数字が嘘みたいに、空気がふっと冷えた感じがしました。蝉の声が遠くから聞こえて、四宮の鳥居越しに、夏の光が斜めに差し込んでくる。
「神宮の別宮ってね、街の中にあっても、足を一歩踏み入れた瞬間に世界が変わるんだ。これがね、伊勢で生まれ育った者が、当たり前だと思って気付かないでいる宝なんだよ」
おじいちゃんがそんなことをぽつりと言って、四宮それぞれにゆっくりと手を合わせていました。

参拝のあと、おじいちゃんが「夏の月読宮は、参拝のあとに少し腰を下ろして、木陰の風を浴びるところまでがセットなんだ」と言うので、二人で境内の端のベンチでしばらく休憩しました。あたしは帰り道の自販機でアイスを買って、結局おじいちゃんに「また食べ過ぎだ」と笑われたんですけど。
まとめ ― 季節を変えて、何度も歩く
月読宮は、内宮ほど混まないし、外宮ほど大きくもない、街なかの静かな別宮です。だからこそ、季節を変えて何度も訪れることで、伊勢のお宮の表情が、ぐっと立体的に見えてくる場所だと思います。
訪問者の方には、内宮参拝の帰り道に立ち寄って、四宮を順に丁寧に巡る時間をとってほしい。在住者の方には、四季それぞれの空気を確かめにふらっと立ち寄る、日常の散歩コースとしておすすめしたい。
第63回神宮式年遷宮の8年間も、月読宮の四宮はずっとそこにあります。あたしも、季節を変えてまた歩きにいきます。